1 candela
書類が山のように積もっていて、今にも崩れてしまいそうな部屋で綱吉は一生懸命に書類に目をとしていた。
そんな時、誰かがドアをたたいた。
「誰!?」綱吉はびっくりして日本語で言った。そしてしまった!と思った。ここはイタリア某所。日本語を別のファミリーのスパイにしゃべったらすぐに正体がばれてしまう。だが今回は運が良かった。ドアを開け入ってきたのはバジルだった。
「お久しぶりです沢田殿。突然お邪魔してすみません。お元気で何よりです!」バジルが言う。
「バジル君!お久しぶり!どうしたの?門外顧問に属するバジル君がここに来るなんて、絶対に何かの祝い事じゃないよね?」綱吉は嬉しそうに挨拶した。だがバジルがここにきた本当の理由が綱吉には分からなかった。
「実は、親方様から伝言がございまして…。」バジルが言う。
「父さんから?」綱吉が聞く。
「はい。沢田殿はMIRAをご存知でしょうか?」バジルが続ける。
「MIRA?誰それ?」話が分からず、綱吉は戸惑う。
「どのファミリーにも属せず、依頼を受け取り、暗殺を行なう一人の女、独立暗殺工作員MIRA、と呼ばれています。我々が知っているMIRAの情報はMIRAの目が琥珀色で髪の毛が淡い赤色であるということだけなのです。」バジルが説明する。
「そうなんだ。それが伝言に何か関係でもあるの?」話の先が読めず、綱吉は顔をしかめる。
「はい。実は最近、MIRAはファミリーのボスを暗殺するようになりました。今までMIRAに暗殺されたと思われるファミリーのボスはシリサエラファミリーボス、サランダー、リブサスファミリーボス、クレラデ、フィリアリンダーファミリーボス、スミラキエの三人。いずれも精製度Aのリングをひとつ以上所持していました。三人はすべて心臓を何かで打ち抜かれていて、赤い蝋燭が隣で燃えていました。」バジルが続ける。
「え!そんなに!復讐者とかは…」綱吉が聞く。
「残念ながら、MIRAは誰かに雇われています。復讐者は今、MIRAの雇い主を探しています。親方様はMIRAを雇ったのはファルファッレファミリー、ボス、フィロと思われております。ですが親方様でさえ、それを断定する証拠はもってはいません。親方様フィロが危険人物であると断定し、9代目と沢田殿の安全を確保しようとなされています。フィロはもしかしたら次にボンゴレを狙うかもしれませんので。」バジルが説明する。
「そんな。」綱吉は言った。
そのとき誰かがドアをたたいた。バジルはびっくりし、
「では拙者はこれで失礼します!」といって窓から立ち去った。
綱吉は窓を急いで閉め、誰だ!とイタリア語で叫んだ。
「十代目!オレッスよ!」帰ってきたのは日本語の返事。獄寺だった。
「どうしたの?獄寺君」綱吉が問いかける。
「十代目!この前、十代目のための秘書集めで最優秀者を連れてまいりました。」獄寺が言う。そして右に寄った。現れたのはしっかりしていて知的に見える女だった。
女はサラサラしていて大きなウエーブのかかった金色の髪を後ろでまとめていて、琥珀の色に輝く目に強い意志を宿していた。でも、ちょっと悲しい目もしていた。
「はじめまして。十代目、沢田綱吉さん。私の名前は・。これからよろしくお願いいたします。」女、は日本語でそういった。
海 (2007.12.3)