0 candela
淡い月の光が暗い部屋に差し込む。
部屋の中には男が一人いる。
男は何か四角い物を取り出した。
カチっと小さな音がした。小さい人工的な炎が燃え上がった。
男は炎を持ち、別の何かに近づけた。別の何かも燃え上がった。
男はこの動作を何十回も繰り返した。部屋が明るくなっていった。
炎に照らされた男はどうやら部屋に奇妙に配置された奇妙な形をした蝋燭立てに乗せられたさまざまな形の蝋燭にライターで火をつけていた。
部屋にはあわせて125本の蝋燭立てと蝋燭がおいてあった。蝋燭立ての高さはそれぞれ違い、蝋燭もそれぞれ異なった形をしていた。
125本の蝋燭のうち124本は白だった。残りの一本は淡く美しい赤色の蝋燭で部屋で二番目に高い蝋燭立ての上に置かれていた。
その蝋燭は部屋の真ん中に立てられ、それを中心に半径約1メートルには何もおかれてはいなかった。
男は124本の白い蝋燭に火を付けた後、窓に歩み寄り、窓の鍵を開け黒いカーテンを閉めた。
今、男のいる部屋を照らしているのは不気味な蝋燭の明かりだけだった。男は何も置かれていない円の中に入り地面であぐらをかいて座った。
蝋燭の光にライトアップされた男は黒いスーツを身にまといにやけていた。どう見ても、よからぬことをたくらんでいるように見える。
男は何もせず、ただ座っている。静寂が訪れる。
その静寂を破ったのは男が持っている腕時計のアラームだった。
男は時計を見た。12時ぴったりを指している。その瞬間、124本の蝋燭の火が消え、代わりに中心の赤い蝋燭に美しく輝くオレンジ色の炎の花が咲いた。
いつの間にか、赤い蝋燭をはさんで反対側に足まで届くフードつきのマントを着ている女がいる。
女はフードをすっぽりとかぶっている。フードからのぞく淡い赤色の髪は蝋燭の光に照らされ、反射している。フードの奥には鋭い琥珀色の目が宿っている。
「来たか。MIRA」男は女に言う。女の名前はどうやらMIRAらしい。
「マタ、デスカ。オ久シブリデス、ファルファッレファミリー8代目、フィロ」MIRAが冷たく、ロボットのように言った。
「また、とはなんだい?まあ良いさ。今回、お前を呼んだのは…ボンゴレファミリー10代目の行動をX-dayまで見張り、X-dayに沢田綱吉、つまりボンゴレファミリー十代目だが、そやつを暗殺してもらいたい。もちろん定期的に連絡を取る。X-dayもまだ決まってはいないからな。」フィロが続ける。
「ツマリ、スパイデスカ?何故私ヲ?貴様ノハイカニハ沢山優秀ナスパイガイルデハナイカ。」MIRAが問いかける。
「オレの配下にはいる。だが、ボンゴレ10代目と年が近いやつはいない。お前なら何歳にでもなれるだろう?20歳…難しくはないだろう?」フィロが続ける。
「身分ハ?」MIRAが聞く。
「のってくれるのかい?嬉しいね〜。身分は沢田綱吉の新しい秘書だ。応募して、受かれ。お前にならできるだろう?」フィロは申込書とも見られる紙をMIRAに投げた。
「ソウカ」MIRAが紙をキャッチする。
「報酬は前回と同じでよいか?」フィロが問う。
「H-2658ニイレテオケ。」MIRAが言う
「デハマタ。連絡ハ前回ト同ジ所ニイレテクレレバ良イ。」そうMIRAが言った瞬間黒い影と共に124本の白い蝋燭がともり、赤色の蝋燭の炎とMIRAは消えていた。すべてMIRAが来る前の状態だった。
「どう出るんだい?MIRA・・・いや、・」フィロがにやけてつぶやいた言葉は闇に溶け込んだ。
海 (2007.11.25)